世界初!-70℃の高温超伝導体の結晶構造を解明(Nature Physics)

200ケルビンを超える高い温度での超伝導が超高圧力下で発現することが硫化水素において発見されたのはたいへんな驚きでした。しかし、そのメカニズムを解明するための情報を実験的に得ることはかなり困難です。それは、超高圧という極限条件下の実験であることはもちろん、水素原子が小さく反応性が高いためです(閉じ込めても周りの物質中に拡散して逃げたり反応して壊したりするので特に圧力実験はたいへんなのです!)。

わたしたちは、超高圧力下にある硫化水素について室温と低温の電気抵抗測定&放射光X線回折実験をおこなうことによって常伝導状態と超伝導状態の両方の結晶構造を測定しました。実際のところは、水素が小さい(電子が少ない)ためにX線回折ではほとんど検出できないので結晶の中の硫黄の配置を観測した、ということになります。その結果、それが理論的に予測されていた超伝導相の結晶構造とよく一致していることがわかりました。硫化水素(H2S)が圧力下でH3SとSに分解した、そのH3Sの結晶型が体心立方格子であって、それが高温超伝導体の正体であることがほぼあきらかとなったのです。

基礎工学研究科のプレスリリース:2016-05-09 プレスリリースのお知らせ「世界初!-70℃の高温超伝導体の結晶構造を解明」(榮永特任助教)リリース資料全文

SPring-8のプレスリリース:世界初!-70℃の高温超伝導体の結晶構造を解明 -室温超伝導体実現に大きな一歩-(プレスリリース)

英科学誌ネイチャー・フィジックスに掲載された原著論文はこちら。
“Crystal structure of the superconducting phase of sulfur hydride”
Mari Einaga, Masafumi Sakata, Takahiro Ishikawa, Katsuya Shimizu, Mikhail I. Eremets, Alexander P. Drozdov, Ivan A. Troyan, Naohisa Hirao, Yasuo Ohishi
Nature Physics (2016)
doi:10.1038/nphys3760

世界初!-70℃の高温超伝導体の結晶構造を解明(Nature Physics)” に対して2件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。